YZ250 純正CDIとチャージコイル、ピックアップコイル波形の調査

きまぐれでYZ250のCDIを作ろうとしている。もちろん作る必要は全くない。ただ点火時期のセッティング出来たら面白そうだなーとか、おそらくサイリスタでスイッチングしてるキャパシタの放電をIGBTとかより高速でスイッチングできる素子にしてみたら始動性やストールタフネスが上がったりしないかなとか、それくらいの気持ち。あとは自家用3Dプリンタが意外とお手頃に手に入ることが分かったので、それでぴったり合うケース出来るじゃん、という気持ちになってやる気が出てきたのもある。実は5年位前にも作ろうとした時があって、その時はCDI自体は作れるとしてもネックのあの狭いスペースに収まり、防水性が保証できるケースなんて市販品にあるわけないと気づいてそこでやる気がなくなった。今回も飽きたらやめるつもりだが果たして完成するか。点火装置を作るのは7年ぶりくらい?で色々忘れているから思い出すところから始める。

マニュアルとCDIの調査

CDIの仕組みはわかるのだけど、問題はチャージコイルをどうやってつなぐか。また当然キャブのレーサーだから12V発電系がないので、どうやってマイコンを動かしたりソレノイドを動かしたりするDC電源を作っているかとかが分からない。そのあたりをCDI本体と車体をみて調査したいが、まずはマニュアルを見てみる。

 

まずはチャージコイル1から。マニュアルによれば抵抗値はB/RとBで見ろと書いてある。Bは車体アースなのは確定なので、チャージコイル1は片端がGNDに落ちていることが分かる。また抵抗値からみてもこれはキャパシタをチャージするための点火用チャージコイルで間違いないだろう。

チャージコイル2は、G/LとG/Wで測れと書いてある。つまりGNDからは浮いている。CDIの中身でつながるかもしれないが、とりあえず車体上では浮いていることになる。また抵抗値がキャパシタチャージ用としてはありえないくらい低いので、これはDC電源専用のコイルだと思われる。そしてCDI本体のG/LとG/Wが接続されるピンと、GNDピンの間をテスターのダイオードレンジで測定してみたところ、どちらもGND→G/L, GND→G/W間で0.18Vとなり、逆は導通なしだった。ということはチャージコイル2が発電した電力はブリッジダイオードで全波整流してDC電源にしてるんだろう。一応G/L, G/Wとチャージコイル1のB/Rとの導通も見てみたが、双方向とも導通なし。これで確定。チャージコイル2は点火には使っていない。あとどうでもいいがマニュアル上でもチャージコイルと言ってみたり、ソースコイルと言ってみたり、表記ゆれがあるのはどうなんだ。ヤマハ内でも呼称が統一されていないのかな?

次にピックアップコイルがつながるW/L, W/RピンとGNDとの導通をCDIで確認すると、W/RがGNDに落ちていることが分かった。つまりW/Lピンがピックアップ入力として使われてるということだ。

なんだ、マニュアルとCDIだけでほぼわかってしまった。ヤマハにありがちなチャージコイルが低速と高速があるパターンだとややこしかったのだけど、シンプルだったからすぐ解析できてよかった。

でもってこんなもんでしょうの純正CDI回路図を引いてみた。

アナログ点火は多分そうだろうで書いている。なぜかというと純正ピックアップ信号の第二波がBTDC5 degで来るし、YZ250のアイドリング点火時期と一致している。ということは第二波で強制点火してるんでしょうという想像。クランクスピードのムラがでかい2st単気筒だからたぶんそう。

実機調査

日高2DAYSぶりにバイクに触れるし、気持ちの良い秋晴れの下での作業は楽しい。まずは日高仕様から戻していきつつ、オシロをつなぐ。ポータブル電源あると便利だね。

途中TMXをいじったりする。今度着けよう。

さて実機調査

条件 1

CDI未接続で、ギヤを入れてタイヤを回して測定

CH1  BR (点火用チャージコイル)

CH2  WL (ピックアップコイル)  WRはGNDに落とした

GNDは全て車体アース

回転数をいくつか振って調べてみる。プラグ外して1速に入れてタイヤを死ぬ気で回してでるのが1170RPMくらいということが良く分かった。無駄に汗だく。

さてこの波形からCHG1はだいたい500RPMも回っていれば150-200Vくらい出ること、ピックアップも2V以上出ることが分かった。また位相的にチャージは第二波が来てから次の第一波が来るまでの間のちょうど中間に2回できることになる。

第二波でアナログ点火したとして、ゲートを閉じてからチャージが始まるまでにだいたい8msくらい。1000回転で8msとすると10000回転では800μs。ゲートを閉じれなくてチャージを取りこぼすようなことはなさそう。つまり第二波はピックアップ信号で直接ゲートを叩いてOKだろう。

第一波と第二波の周期も見てみる。クランク1回転の周期51msに対して、第一波と第二波の間隔が4.7ms

(4.7/51)*360 = 33deg

ということで第一波と第二波の間隔は30-35度程度ということが分かる。第一波が来てから点火時期計算する時間もちゃんとありそう。多分間に合う。

つぎにCHG2、DC電源用のチャージコイルの波形を見てみる。

条件 2

CDI未接続で、ギヤを入れてタイヤを回して測定

CH1  GW (DC電源用チャージコイル) GLはGNDに落とした

CH2  WL (ピックアップコイル)  WRはGNDに落とした

GNDは全て車体アース

始動時500RPMくらいでも、CHG2は20V以上発電している。始動時はピックアップの電力でサイリスタのゲートを叩くならべつに発電してなくてもよいんだけど、この感じだとマイコンも動くかも。ただもし電源が足りないなら、始動時、低回転のアナログ点火はゲートドライバを介さないでゲートを叩いたほうが良いかもしれない。でないとゲートドライバの電力不足で点火できないなんてことがあるかも。これは基板作成時ジャンパ線でゲートを直接叩くか、ゲートドライバを介するか選べるようにしたい

またよく見ると、ピックアップ第二波が来る直前に発電するような位相になっているので、ひょっとするとアナログ点火したい低回転での電力不足によってゲートを叩けないことがないように考慮されているのかもしれないとちょっと思った。

条件 3

CDI接続して、キック時測定

CH1  GW (DC電源用チャージコイル) GLはGNDに落とした

CH2  WL (ピックアップコイル)  WRはGNDに落とした

GNDは全て車体アース

左に見切れているのががキックスタート一発目のCHG1波形。キックだけで900rpmくらい出ていることが分かる。意外と高回転まで回るんだな。セルより速そう(4st 750cc 4気筒のバイクはセルで500rpmくらいだった)。

条件 4

CDI接続して、キック時測定

CH1  GL (DC電源用チャージコイル) GWはGNDに落とした

CH2  WL (ピックアップコイル)  WRはGNDに落とした

GNDは全て車体アース

目論見通り全波整流してそうな波形。またAC時点で電圧がピークカットされているようにも見える。この辺りはまた回転数を変化させてとってみたい。

というわけで今回の調査はここまで。あとわからないのはDC電源の作り方。だいたいレギュレートレクチファイヤ的な回路が入っているんだろうけど、使う電力は少ないし、それをどうリーズナブルに組み立てているかが気になる。あとはピックアップ信号の整形をどのようにしているか、また第二波で本当にアナログ点火しているのかあたりを調べたい。それには現物CDIをばらしてみるのが手っ取り早いのだけど、さすがに2万くらいするのでもったいない。そこで何か適当なCDI無いかなと思ってヤフオクを見てたら13のYZ250FのCDIが出ていた。サービスマニュアルによれば、この年式はキャブ最終で、点火方式もCDI、チャージコイル1とチャージコイル2の接続もYZ250と一緒なかんじ。これならほぼ一緒だろうということで1500円で落札。

完全に見た目は同じ。まあソレノイド駆動のありなしくらいしか違いないもんね。マップは違うけど物自体は一緒でいいに決まってる。

どうやらアセトンに着けておくとゴムがふやけてばらせるらしいので、とりあえず穴をあけまくってしばらく放置。

 

今回の調査まとめ

docs.google.com