技能検定 機械加工(マシニングセンタ作業)1級の内容について

2023年8月に実施された国家技能検定 機械加工(マシニングセンタ作業)1級に合格したので、備忘録がてら試験の内容について書いてみます。

今は加工からは離れていますが、メーカーでアルミの加工製技として4年働いた経験があったので、その腕試しとして受けてみました。

実技試験

課題1

穴の空いた5種類のワークを渡されます。これらのワークがドリル、エンドミル、リーマ、ボーリング、ローラーバニシングのどの加工法で加工したかを目視で判定する必要があります。普段から各加工がどんな加工面になるか見ていれば楽勝だべと思っていたのですが、意外と悩みました。ドリルとローラーバニシングは一番面が粗いのと、一番面がきれいなのを選べばいいのですが、残りはあまり自信なかったです。残り3つで一番目が綺麗で、らせん状の目もない物を最初はリーマと判断したんですが、よくよく見るとエンドミルでコンタリングしたような痕がありました。残り二つがどうみてもリーマで加工したにしては粗すぎるような気がしてかなり悩んだのですが、最終的に粗さは気にせず跡目だけ見て回答を書きました。

 

課題2

正面フライスで挽いたワークを渡されて、目視(触診)で粗さを測定するので事前に粗さ標準片をカリカリ触っておくのが良いと思います。自分は仕事で3.2Z~25Zくらいまではシャーペンでカリカリして判別してたので、イキってそのまま受験しました。

触った感じ6.3Zか12.5Zくらいと判別したのですが、目標粗さが8μmだったので、現物は12.5だろうなということでそれをもとに必要送り速度を計算しました。

 

課題3

同じ材料を2種類の加工条件で加工した際の粗さ曲線が示されるので、ダイヤ、CBN、超硬、サーメット等どのチップで加工したか判断する問題です。今回は材料はアルミで、断面曲線も非常に綺麗に周期的な曲線を描いていたので、アルミをCBNで削るとかいうおかしな組み合わせで加工したわけではないことはすぐわかり、なおかつ慣れ親しんだアルミの断面曲線だったので、加工条件を見なくても答えが分かるレベルでした。

 

課題4

練習もしませんでしたが特に難しいことはないです。マイクロメーターを使えて、エンドミルのどこを測るか理解していれば問題ありません。

 

課題5

実技で一番鬼門なのはこれでは?と思います。やることは穴の深さと径をデプスマイクロとシリンダゲージで測るだけなのですが、シリンダゲージの段取り入れて5分で測定しなくてはいけないので時間がありません。シリンダゲージもデプスマイクロも使い慣れているので測定自体は問題ないのですが、普段は径ごとにセットされたシリンダゲージをマスターリングでゼロセットしてから使うため、ノギスでラフ測定→マイクロメーターをセット→シリンダゲージを段取りするという一連の流れは体験したことがなく、2分以内で出来るよう練習しました。しかしここまで準備しても本番では結構まごつきました。答えなしにならないよう、本番では深さから測ったほうが良いと思います。

 

課題6

主軸とインデックスの心出しをします。設備を使う実技はこれだけで、一番配点が大きいといわれていますが真相はわかりません。B軸にイケール治具を付けた横マシをメインで触ってきたので、普段慣れている機械ならちょろいのですが、試験場の機械だとどうなんだろうとかなり不安がありました。ただ試験1,2週間前に下見の機会があり、そこで設備の実物と操作方法、なんなら心出しのやり方まで教えてくれました(いいのか?)。ちなみに受験地は宮城県で、会場は職業能力開発大学校でした。設備はマキノの40番の縦マシで、インデックスは手動です。手厚い下見のおかげで本番でも2回測る余裕を残して回答できました。

 

実技試験(計画立案等作業問題)

実技試験とは言うものの、ここからはペーパーテスト。ちなみに1日目に職業能力開発大学校で実技試験、2日目午前に計画立案等作業問題と学科試験を職業能力開発協会で受験するという流れでした。

試験内容は例年とほぼ変わらず。

鬼門はこの加工順を決める問題化と思います。年によってはリーマ下穴をタップの前に加工するのが正解だったり、タップ後に加工するのが正解だったりするので勘弁してほしい。加工順はバリがどっちに立つかとか、加工時間をぎりぎりまで削るかとか、切削タップなのか転造タップなのかとか、刃具寿命がうんたらかんたらとか考えると結構問題の正解とは違ったりするので、試験の求める正解を過去問で勉強しておく必要があります。

あとは最後のNCプログラムの間違いを見つけるやつですかね。手打ちでGコードをすらすら読み書きできる人なら普段もデバッグの時にやってる作業なのでまず大丈夫ですが、CAMでしか扱っていない人は難しいかもしれません。ただデバッグの時にミスを見つける場合、LCDに表示される残移動量や、実際の動きを見てブロックの指令がおかしいことに気が付くのがほとんどなので、プログラムだけ見てミスを見つけるのは案外気づかないこともあります。穴あけとかでのG00とかG01のモーダルコードを省略する関係のミスは結構見落としがちです。あとはこの画像にある固定サイクルのG99とG98ですかね。見つけやすくかつ頻出なのは座標指令値の間違いとか固定サイクルG81~G84の間違いとかです。

学科試験

公開されている過去問を全部解いていればまず受かると思います。今回もトリッキーな問題は出ませんでした。自己採点で96/100点。65点取れてればよいので楽勝。

技能検定試験問題公開サイト | 中央職業能力開発協会

まとめ

工程設計、刃具・治具仕様検討、NCプログラム作成、デバッグ、試加工・精度出し、測定、日常管理・不良対策の一連の流れを独りで出来るレベルの経験を積んだ製技マンならちょろっと勉強すればペーパーテストは受かると思います。実技もそこまで難しくないので、対策すれば受かるでしょう。なので加工製技(生技)として2,3年経験を積んでいる方の腕試しとしておすすめです。