2022以降のYZ125のキャブセッティングが余りに出ないため、ケーヒンとミクニの2st用キャブレターに関する特許、その他参考になりそうな論文、書籍を調べたのでメモしておく。取りこぼしもあるかもしれないが、一応電子版が閲覧できる平成以降の特許は全て調べたつもり。
特開番号で以下のサイトで検索するとだれでも閲覧できる。
特許
ケーヒン
特開2000-329007 気化器のエアベント装置
特開2000-329006 気化器のエアベント装置
特開2000-008959 気化器のエアベント装置
いずれもジャンプ時等、フロートチャンバ内の燃料が上側に張り付き、エアベントを閉塞してしフロート室内が負圧となり、燃料をベンチュリ内に供給できなくなる現象(ボギング)を改善するために、エアベントを工夫した発明。形状は異なるがPWKでも採用。
特開2000-213422 プライマリー型摺動絞り弁型気化器
鍔状のメインノズル先端部を持つことで、燃料微粒化によるレスポンス向上を図った発明。PWKには未採用。
特開2000-213421 プライマリー型摺動絞り弁型気化器
メインノズル先端形状の工夫により、燃料の噴出特性を調整する発明。PWKには未採用
特開2000-073865 摺動絞り弁型気化器におけるパワー燃料装置
パワージェットノズル位置、形状の工夫により、スロットル開閉操作による負圧の変化への応答性を改善した発明。PWKでも採用。
特開平10-220293 摺動絞り弁型気化器における摺動絞り弁
特開平10-220292 摺動絞り弁型気化器における摺動絞り弁
どちらも凹曲面を持つカッタウェイにより、ベンチュリ流速を増大することで、メインノズルおよびスローポート、バイパスポートに立つ負圧を増大させ、燃料微粒化と燃料増量側へのセッティング自由度を高めた発明。PWKで採用。
※負圧が小さすぎると、ジェットをいくら大きくしても燃料流量が増大しなくなるため、燃料増量側へのセッティング自由度が少ない。
特開平10-141140 摺動絞り弁型気化器
バイパスポート上流側に突起を設けることで、バイパス、スローポートへかかる負圧を高め、加速運転時における応答性、トルク感の向上と、リニア特性の向上を図った発明。PWKには未採用。
特開平10-082348 摺動絞り弁型気化器のバイパス孔
バイパスポートベンチュリ開口部に小凹部を設けることにより、スロットルバルブ開度変化によるバイパスポートにおける負圧の大幅な変化を抑制し、低速燃料流量を安定させる発明。PWKには未採用
特開平09-264194 可変ベンチュリー式気化器
特開平08-284759 可変ベンチュリー式気化器
いわゆるAG(Air Guide)。ベンチュリのエアクリーナ側に整流壁を設けて、カッタウェイに向けて空気を整流、流速を高めることで低中開度における負圧を高め、スロットル操作に対する燃料流量の応答性改善、また燃料微粒化を図った発明。2対の整流壁を設けるのが特開平09-264194, 1対の整流壁を設けるのが平08-284759。PWK AGでは1対の整流壁を採用。AG以外のPWKには未採用。
実開平05-083347 気化器のプライマリーチョーク装置
プライマリーチョーク先端部の中心に溝を設けることで、メインノズル周辺の渦流を緩和し、渦流による混合気の管壁付着を減少させかつ燃料を微粒化することで応答性の向上を狙った発明。PWKに採用。
ミクニ
特開2003-201920 摺動弁式気化器
パイロット経路のバイパスポートをプライマリーチョークによる空気の減速を受けない領域(キャブ中央を中心として左右対称)に設けることで、バイパスポートの負圧を高め、低速から高速への応答性を高めることを図った発明。TMXに採用。
特開2002-349353 ピストン型気化器
プライマリーチョークに小穴を設けることで、メインノズル回りの渦流を低減し、渦流による混合気の管壁付着を減少させかつ燃料を微粒化することで応答性の向上を狙った発明。TMXに採用。
特開2002-021640 二輪車向け摺動弁式気化器
メインエア導入口に網を設けることで、砂塵、ゴミの侵入を防いだ発明。TMXで採用。
特開2001-090611 摺動弁式気化器
スロットル低開度時、メインノズルのジェットニードルのストレート部がかかる領域に小穴を設けることで、プライマリータイプとエアブリードタイプの長所を兼ね備え、その結果パワージェット等補器を用いることなく理想的な流量特性を得ることを測った発明。TMXで採用。
特開平09-242613 気化器
繭型スロットルバルブにより、スロットルバルブを通過した空気がメインノズル周辺に集中し、燃料の壁面付着を抑えることで、応答性の改善を狙った発明。PWKのスロットルバルブ形状より、壁面への燃料付着が少なく応答性に優れている旨が記載されている。TMXで採用。
実開平07-008548 可変ベンチュリ型気化器のメインノズル
TMRに採用されたハイパーノズルの特許。4st用だが、そもそもカッタウェイがなぜ必要か、そしてどうしてカッタウェイをできるだけ小さくしたいのかが書かれているので必読。
書籍
魚住・竹内・荒井・鈴木 : 自動車用気化器の知識と特性, (1984), 山海堂, ISBN4-381-10004-2,
キャブレターに関する教科書。廃番なのが惜しいがたまにヤフオクやメルカリで出てくる。
論文
まだサラッと概要を読んだだけだが一応メモしておく
全てGoogle ScholarでPDF閲覧可能
室蘭工業大学学術資源アーカイブで気化器、とか2サイクルとか検索するとほかにも面白そうな論文がたくさん出てくる。過去に内燃機関を研究していたえらい先生がいたようだ。
宝諸幸男. 単純気化器におけるエアブリードの混合比調整作用について. 日立評論, 1962, 44.9: 1387-1393.
浅野弥祐, et al. 空気ブリードによる気化器特性の変化. 日本機械学會論文集, 1967, 33.255: 1853-1859.
浅野弥佑; 磯部一郎. 多孔式空気ブリードによる気化器特性の変化. 日本機械学會論文集, 1971, 37.297: 1026-1032.
澤則弘; 山辺信. アマール型気化器の定常特性に関する研究 (第 1 報). 室蘭工業大学研究報告. 理工編= Memoirs of the Muroran Institute of Technology. Science and engineering, 1967, 6.1: 187-208.
林重信; 澤則弘; 飴谷孟. 小型 2 サイクル機関の燃料供給に対する研究 (第 2 報): 実用機関の燃料流量特性. 室蘭工業大学研究報告. 理工編= Memoirs of the Muroran Institute of Technology. Science and engineering, 1976, 8.3: 651-669.
林重信; 澤則弘. 小型 2 サイクル機関の燃料供給状態に関する研究 (第1報): アマール型気化器の非定常特性. 室蘭工業大学研究報告. 理工編第 8 巻第 2 号全 1 冊, 1974, 8.2: 363.
澤則弘. 小形 2 サイクル機関の吸気管系最適化に関する実験的研究. 煤, 1979, 125.k36: D52.
その他参考になるサイト
特許ではないけど、参考になるサイトをメモ
おそらく全世界のプライベーターで一番2stに詳しいパラグアイのオヤジ
キャブレターの各社純正品番とスペックが載っているサイト
今は退官されているが、名工大の内燃機関工学の先生だった方のサイト。内燃機関について調べていると必ずたどり着いてしまうとその筋では有名。