プライマリーチョーク(メインノズル)とカッタウェイの関係について

ここではキャブレターには必ず設けられるプライマリーチョークの役割と、それと対になるスロットルバルブカッタウェイの功罪について説明する。またミクニTMXがなぜ同一エンジンにおけるセッティングで、PWKよりカッタウェイが小さくても問題がないのかについても説明する。

プライマリーチョークとはどの部品か?

これはミクニTMX38をエアクリ側から見た写真である。ベンチュリ中央下側に見える、ベンチュリ内に突き出している真鍮製の部品がプライマリーチョークである。

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これは同じくエンジン側から見た写真である。メインノズルを取り囲むように壁が立っているのが分かる。またプライマリーチョーク、という文言はケーヒン、ミクニそれぞれの特許文献で使用されているので、一般名称としてこの記事でも使用する。

プライマリーチョークの役割

プライマリーチョークは、壁によりメインノズルにかかる負圧を高め、燃料を増量させる効果がある。またどの領域でより効いてくるかは、ケーヒンの実用新案

実開平05-083347 気化器のプライマリーチョーク装置

によれば、より高速域(高開度)に向けて、燃料噴出特性を立たせる(リッチに振る)ために設けられる、とある。

つまり、前回の記事で紹介したミクニ特許のイメージグラフで考えると、この図のプライマリーエアタイプの直線の傾きを大きくする方向に働くと考えられる。

つまりプライマリーチョーク高さの決め方としては、エンジンの最高出力が出る領域(当然スロットルは全開)において吸入空気量は最大となるため、ある口径のキャブを装着して最大空気量を流したときに、必要な空燃比となる燃料流量が得られるプライマリーチョーク高さを選択するのではないかと考えられる。この仮説が本当か、またプライマリーチョークによって低速側の燃料流量は変化するのか等が分かる文献は見当たらなかったため、学生時代理解することなくおざなりにこなして来た流体力学の復習をしているため後日わかり次第記事を書く。

プライマリーチョークの弊害

プライマリーチョークにはメインノズル負圧を高め、燃料流量を増大させる効果があるが、その弊害としてはスロットル中開度、低開度においてノズル負圧が高まりすぎるというものがある。低中開度ではニードルのストレート、もしくはテーパーの初期段階が働いており、全開時より流路面積は狭くなるため、負圧が高まりすぎるとわずかな流路面積の変化でも燃料流量が大きく変化してしまうことになる。つまり、ニードルの変更や摩耗によって、大きく空燃比が変わるため、非常にセッティングがシビアになる傾向となる。これがプライマリーチョークが及ぼす弊害である。

スロットルカッタウェイの功罪

プライマリーチョークの弊害を抑えるためには、低中開度ではノズル負圧を適度に低く抑える必要がある。このために設けられるのがスロットルカッタウェイで、これを設けることでメインノズルに向かって空気の流れが曲げられるので、メインノズル回りの負圧を弱めることができる。ただし、カッタウェイを設けると、ベンチュリ全体の流速が下がり、エンジンの出力が出ないという問題がある。また、メイン系のみならず、スロー系にかかる負圧も減ってしまい、スロー系の燃料流量が減少し、メイン系とスロー系の燃料流量の割合(ミクニ特許によれば分担率という)を適正にすることができない。その結果、メイン系で本来スローが担当するべき領域までカバーしなくてはいけなくなり、ニードルとメインノズルのセッティングがシビアになる。ここをシビアにしたくないからカッタウェイを付けたのに、本末転倒になるというわけだ。この2点の弊害はカッタウェイを大きくするほど悪化する。

つまりカッタウェイは空気流量(エンジン出力)を稼ぐためにはできるだけ小さいほうが理想的だが、それだと針のセッティングがシビアになりするために仕方なく設けられている。

このため、実際のキャブレターでは、ニードルのセッティングがシビアになりすぎないよう、キャブレターとエンジンに合わせて適当なカッタウェイが設けられている。またカッタウェイは先に述べたように、メインとスローの分担率も変化させる。つまり、カッタウェイを小さくすればスローの分担が上がり、またメインからの燃料立ち上がりも早くなる。逆にカッタウェイを大きくすればスローの分担は減り、メインからの燃料立ち上がりも遅くなる。このメインとスローの受け渡し領域についてカッタウェイは影響することになり、スロージェット、ニードルだけでは補正できない、またはシビアな調整が必要になる領域を担当するセッティングパーツとして、レーシングキャブレターには各種サイズが設定されている。

実際のカッタウェイラインナップと排気量ごとの選択傾向https://www.keihin-na.com/assets/1/7/carbslides.pdf

ケーヒンPWK38には3~9まで、1mm刻み、また5~8mmまでは0.5mm刻みで用意されている。ミクニTMX38にも、CR250のパーツリストによると、4~6が用意されているようだ。

www.thumpertalk.com

そしてこのフォーラムにおいて、気になる書き込みがあった。2サイクルチューニングショップのEric Gorrが言うには、125ccには#5~#6、250ccには#7~#8を推奨するとのことである。ほかにもCR250の純正#5.5が全くセッティングが出ず、これを#7にしたら改善した(後年式で純正#7に変更された)書き込みや、22以降のYZ125において#7から#5.5でセッティングが改善した例を散見した。この辺に何か肝があるはずなので、きちんと理屈が分かったらこの情報の真偽を確かめたい。またPWKのカッタウェイに関しては以上のように多数の書き込みが見つかったが、TMXに関しては今のところ見つけられていない。TMXは21以前のYZ125は#4で、キャブ最終のKTM 250EXCも#4であるのも気になっているので、まずカッタウェイセッティングがなぜ排気量によって影響を受けるのか、またTMXには排気量によらず同一カッタウェイでセッティングが出しやすい傾向があるのかについての理屈を考えている最中である。

TMXはなぜカッタウェイを小さくできるのか?

プライマリーチョークとカッタウェイの関係は、あちらを立てればこちらが立たず、という関係で、ほどよいところを見つけて選択するしかない。しかしなぜ同じ口径のキャブを、同じエンジンに取り付けても、TMXとPWKでカッタウェイが大きく異なるのか。

これは、左がPWKの#7、右がTMXの#4のスロットルバルブの写真である。ちゃんと角度を測ったわけではないのでインチキ臭い説明にはなるが、とはいえ見るだけでも明らかにTMXのカッタウェイが小さいのが分かると思う。PWK#7はYZ250純正サイズで、問題なく走ることができているし、YZ250に#4を取り付けたTMXを取り付けた際も、特にスローとメインの繋がりに不満はなかった。そのため、TMXにはなにかカッタウェイを小さく保てるような工夫があると仮説を立ててみた。ここから先は文献をもとに検証しているが、推測が多分に含まれるためご注意願いたい。

先ほど説明した通り、カッタウェイが小さいと、メインノズル負圧が高まりすぎて針と筒のセッティングがシビアになる。しかし仮にメインノズル回りだけ局所的に負圧を低く抑えることができる仕組みがあるとすれば、小さなカッタウェイでベンチュリ全体の流速を確保しつつ、針のセッティングもシビアにならない理想的なキャブレターが実現できる。それを実現したのが以下のミクニ実用新案である。

実開平07-008548 可変ベンチュリ型気化器のメインノズル

メインノズルの負圧を何とか低めつつ、カッタウェイは大きくしたくないという背反を解決するためにミクニが開発したのがこのノズルである。2サイクル用には使われていないが、TMRでハイパーノズルとして採用されている。

これはエアクリから来た空気の流れを、メインノズルを傾斜させることで受け止めて、メインノズルに導入することで負圧を弱める効果がある。これにより、ベンチュリ部流速を保ったまま局所的にメインノズルの負圧を弱めることができるので、カッタウェイを大きくせずとも針と筒のセッティングのシビアさは解消される。ということは先ほどカッタウェイを大きくするデメリットで説明した、スロー系の負圧が減って分担率が悪化するのも解消され、セッティングが容易になる。

またこれはおまけの説明だが、メインノズルのエンジン側に空いている孔は、吸い出された燃料が針から速く離れてほしいために設けているもので、レスポンスの向上を目的としている。2サイクルにはこのハイパーノズルはないので気にしなくていい。

つまり、このような仕組みがあれば、メインノズルに立つ負圧を局所的に減らすことができ、カッタウェイを大きくすることなくベンチュリ部の流速を保てるキャブになるということがこの実用新案からわかる。ここまでは、文献そのままで自分の推測は混じっていないため事実である。

ここでTMXについて考えてみる。

より小さなカッタウェイを持つTMXは針と筒のセッティングがPWKよりシビアになるはずだが、PWKもTMXもストレート径ランクは10μm刻みだし、別にシビアな印象も受けないため、TMXにもTMRのハイパーノズルのように、局所的にノズル負圧を低める仕組みがあるのではないかと考えた。

 

これは前回の記事で説明した、プライマリータイプのメインノズルに、ストレート部と筒が重なる領域に小穴を開けることで、低速域の燃料流量をブースとして、エアブリードタイプのような低速での流量特性を持たせたTMXの仕組みだ。これでパワージェット等の補器がなくても低速、高速で理想的な燃料噴出特性が得られる。

これはこのノズルの、低速域と高速域での負圧を表したイメージグラフである。通常のプライマリータイプに対して、低速域で負圧が大きく減少していることが分かる。ということはこのノズルを使うことで、TMRのノズルと同じように、ストレート域でのノズル負圧を弱めることができていることになる。これでカッタウェイを小さく保ちつつ、針と筒の隙間管理がシビアでもない理想的な状態を作ることができる。

ただここで、このTMXの穴付きノズルは低速域での燃料流量を増やすためのものなのに、低カッタウェイで生じる高いノズル負圧を減らせたとしても、燃料はたくさん出てしまうのでは?という疑問が生じた。

これは燃料流量の増減と、隙間管理のシビアさを混同したことによる勘違だと思う。たしかにTMXノズルで低速の燃料は増えるが、同時にノズル負圧も下がる。ということは低速で吸い出される燃料が増えた分は針と筒の隙間を小さくして燃料を少なくしなければならないが、負圧は低いままなので、ストレートの違いによる空燃比変化は負圧低減効果によって少ないままということになる。

実際の例で確認してみる。
実際に、TMXはPWKより針と筒の隙間が小さい(同一空燃比を得られるセットになっているとして、面積比で1/2程度)。しかしTMXのストレート径での空燃比変化はシビアではない。これはメインノズルに立つ負圧はTMXとPWKでそこまで大きな差はないが、TMXが例のエアブリード小穴の効果によって燃料流量を増大させている理屈と矛盾しない。

以上が、TMXがPWKより小さなカッタウェイを使用できる推測となる。この辺りをもう少し理屈で考えて納得したい。

本記事での引用文献は以下にまとめてあります。本来引用したグラフ、図等は全てそれぞれどの文献から引用したのかわかるようにしておくべきところ、あまりに手間がかかるという理由でこのようなやり方で引用文献を紹介する形になることを引用元および読者に対してお詫びします。

 

tutc-mitsukesibu.hatenablog.com

プライマリータイプとエアブリードタイプの違いについて

この記事ではキャブレターに用いられる2種類の方式、プライマリータイプとエアブリードタイプについて説明する。またそれらのメリットデメリットを示し、それを補うためにパワージェットやコースティングリッチャ等の補器があること、さらにミクニTMXがなぜパワージェットなしでレーシングキャブレターとして成り立っているのかをミクニ特許文献から紹介する。

 

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メインノズル(エマルジョンチューブとも言う)には、4stによく使われるエアブリードタイプのメインノズルを持つものと、2stによく使われるプライマリータイプのメインノズルを持つものがある。この図でいうと右がプライマリータイプ、左がエアブリードタイプとなる。TMX、PWK等はプライマリータイプで、市販4stに使われる純正キャブはほぼエアブリードタイプになる。

この二つのメインノズルの違いについて、まずエアブリードタイプから説明する。エアブリードタイプは、左の図の18で示すメインエア経路から、メインエアジェットを介してメインノズルにエア通路が貫通している。その場所がポイントで、10のメインノズル下部に貫通している。図では表されていないが、10のメインノズルには細かい穴がたくさん空いていて、ここでメインジェットから計量された燃料と空気が混ざって、気液混合状態になる。これは前回の記事で説明した通り。

 

このエアを混ぜる位置はキャブによって違うが、油面の下で混合するものと、上で混合するものと、その両方がある。どちらにしろ、ベンチュリに燃料を吹き出す前に空気と燃料を混合するというのは変わらない。この目的は前回記事で説明した通り、低空気吸入量の時でもリーンにならないようにするためである。

続いて右の図のプライマリータイプについて説明する。これは、38のメインエアジェットから来た空気が、メインノズルの上のほうに貫通している。そして、メインノズルには、空気と混合するための小穴は一切空いていない。つまり、導入されたエアは、メインノズルの穴の周りを環状に囲っている隙間に導入されることになる。そして、メインノズルから燃料が吸い出されると同時に、その周りから空気を噴き出して、そこで初めてメインエアからの空気と燃料が混合される。要は事前に空気と燃料を混合せず、メインノズル吐出口で初めて混ざり合うことになる。

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これはTMXをエアクリ側から見た写真である。ベンチュリ内中央下側にある突起がメインノズルのプライマリーチョーク部分である。プライマリーチョークに関しては後日別記事にて説明する。そしてそこからエアクリ側に寄ったところに正面を向いて空いている、網を被った穴がメインエア経路である。このメインエア経路が、真っ直ぐメインノズルまで通じていることになる。また、メインエア経路から90度交差し分岐する形でパイロットエア経路が空けられており、この分岐の入り口面積をエアスクリューで増減している。

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またスロットルバルブを抜いた状態で、上からメインノズルを見た写真がこれで、針の出入りするメインノズルの穴の周りを環状に取り囲むような隙間がある事がわかると思う。ここにメインエア経路から導入されたエアが繋がる事になる。

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この2種類のタイプの燃料噴出傾向を比較すると、グラフのようになる。低速、高速というのはおそらく低開度、高開度と読み替えても差し支えないと思う。プライマリータイプは低速から高速まで直線的に燃料流量が増えるが、エアブリードタイプは低速での流量を増やせる一方、高速域では流量が低下していく傾向にある。

つまり、エアブリードタイプのキャブで高速域を適正空燃比に合わせると、低速域でリッチになりすぎるし、プライマリータイプでは逆に高速域を適正に合わせると、低速域でリーンになりすぎる傾向にある。この特性をもとに、使用するエンジンに合わせてどちらのタイプかを選択することになる。

この特性を補正するために、パワージェットやコースティングリッチャ等の他を装着する事があるが、当然高価になるしセッティングも難しくなる。パワージェット等を使用せずにこの両方のタイプの長所をあわせもつキャブがあれば理想的なのだが、実はそれを実現したのがミクニのTMXである。

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ミクニが考えたのが、基本はプライマリータイプとしつつ、この図の10番(メインエアジェット)から来る空気を、通常のプライマリータイプ的に、メインノズル燃料流路の周囲からベンチュリに噴き出す流路(図のP)と、このメインノズル燃料流路の周囲にある空気流路と、メインノズル燃料流路を12番の小穴でつなぎ、エアブリードタイプ的にメインノズルで空気と燃料を混合した後噴き出す流れ(図Q)を併用する仕組みである。

この小穴12の効果を説明する。この図のように、針のストレート領域を使用している際は、針と筒の隙間は極めて小さい。また当然スロットル開度も小さいので、ベンチュリには強い負圧が立ち、小穴12にも強い負圧がかかることになる。すると10のエアジェットから空気が高い流速で吸い込まれ、針と筒から吸い出されようとする燃料を微粒化しつつ、燃料流速を上げてくれる。従ってプライマリータイプの弱点である低速域での燃料流量を増大する効果を持つ。

 

スロットルが開いて、テーパーに差し掛かってくると、12には強い負圧はかからなくなるため、低速域ほど強烈な燃料増量効果はなくなるが、依然としてエアブリードの効果を発揮する。これにより、エアブリードタイプほどの高速域での燃料流量低下は起こらなくなる。

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これはエアブリードタイプ、プライマリータイプ、そしてミクニ新開発キャブの燃料流量特性イメージを表したグラフである。このように、プライマリータイプで不足しがちな低速域を小穴で増強しつつ、エアブリードタイプのような高速域での燃料流量低下を押さえた形状となり、パワージェット等の補機を使用せずともエンジンが要求する燃料流量の幅におさめやすくなっている。

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実際のTMX38のS-1メインノズルの写真も載せておく。見ての通り、小さな穴が3個空いている。これがエアブリード効果をもたらす。

 

ここからは推測なので当てにしないようにして欲しいが、この図のイメージは、おそらくプライマリーチョーク高さがグラフの傾き、ジェット大小がグラフの高低を制御するのではないかと思う。もう少し考えが煮詰まったらまた追記するか別記事に記す。

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さらにちょっとややこしいが重要なグラフも説明する。これは見ての通り低速域と高速域でのノズル負圧を、プライマリータイプと、小穴付きメインノズルタイプで比較したものである。

見ての通り、低速域では新開発キャブのほうが負圧が大きく下がっていて、高速域になるにつれプライマリータイプよりやや低い程度に落ち着いている。基本的に負圧が低くなるほど燃料流量は減るので、高速域での燃料流量をプライマリータイプより押さえられるのは理解しやすいと思う。ただ、先ほどまで説明した通り、TMXでは低速域での燃料流量を増強する効果がある。ただこのグラフでは負圧は逆に低まっている。これはどうしてかというと、小穴のエアブリード効果によって、メインノズルの気液混合流の流速が高まるため、メインノズル出口に立つ負圧が下がっていることになる。負圧が下がっても、針と筒の狭い隙間から高速で噴き出すエアの力によって燃料流速が上がり、逆に燃料流量は増えるという仕組みと考えられる。

まとめると、従来のエアブリードタイプは針のストレート部と筒の隙間に空気を噴き出すわけではなく、それよりはるか下の広い隙間で空気を混合していたので、低速、高速でのエアブリードの効き具合を調整することができなかった。これを針のテーパー変化をうまく利用して、エアブリードの効果を調整できるようにしたのがこの特許であり、それが織り込まれたキャブがTMXである。

 

本記事での引用文献は以下にまとめてあります。本来引用したグラフ、図等は全てそれぞれどの文献から引用したのかわかるようにしておくべきところ、あまりに手間がかかるという理由でこのようなやり方で引用文献を紹介する形になることを引用元および読者に対してお詫びします。

2st用キャブレター TMX PWKに関する特許文献まとめ - TUTCミツケ支部

 

 

 

 

単純気化器とエアブリードの効果について

ここでは最もシンプルな構造のキャブレターである、単純気化器をモデルに、なぜキャブレターが空燃比を一定に保てるのかについて説明する。

また本来数式を使って理論的に説明するべきことを、何の根拠もなく文章だけで定性的に説明するような書き方をしていることをお詫びする。仕組みの詳細が知りたい場合は最後に書いてある参考書籍か、気化器 Carburetor を参照されたい。

まず、単純気化器について説明する。このキャブはメインジェットから計量された燃料がベンチュリの負圧で吸い出されて、メインノズルから噴出する、という単純な仕組みを持つ。バイクのような可変ベンチュリ(スロットルバルブがベンチュリ径を変更する)の仕組みはない。

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バイクに使われる、いわゆる可変ベンチュリキャブレターを見慣れている場合、メインノズルにニードルが刺さっているので、吸入空気量=スロットル開度によって燃料の流路面積を変更しないとキャブレターとして成り立たない、みたいなイメージになるのだけど、実は四輪のキャブレターはこの単純気化器のメインノズルよりエンジン側にバタフライバルブを設けているだけで、メインノズルの流路面積は変わらない仕組みになっている。それで吸入空気量の増減に対して一定の空燃比になるわけないだろうって構造なのだけど、実はこれでちゃんと走る。自然の摂理とは不思議なもので、ベンチュリにメインノズルが突き出してるだけで、吸入空気量増減に対して勝手にガソリンが増減して一定の空燃比になるように出来ている。

 

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ただ単純気化器には欠点もあって、実は吸入空気量が少ない領域ではメインノズルにかかる負圧が少なくなるため、リーンに振れてしまう。吸入空気量が大きくなるとこの負圧が大きくなって、負圧の変化に対して鈍感になるため、一定の空燃比に漸近する。それを表したのがこのグラフだ。吸入空気量が少ない左側で極端にリーンにふれていることに注目して欲しい。また油面差hによる影響で、吸入空気量が極小の時にはそもそもガソリンを吸い出せていない。実際の気化器ではこの全くガソリンを吸いだせない領域についてはスロー系と呼ばれるスロージェットからの燃料を供給するのだけど、それより先の極端にリーンに触れている領域はスロー系だけでは補えないため、別の仕組みが必要になる。

 

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そこで考え出されたのが、エアブリードである。メインノズルにエアブリードジェットから空気を導入する事によって、メインノズル内のガソリンが、ガソリンと空気の混合物になる。するとガソリン単体より比重が軽くなるので、結果的に弱い負圧でも吸い出せるようになる。そうすると、先のグラフでリーンに触れていた領域が適正空燃比に近づくことになる。

 

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この図の通り、穴の空いていない普通のストローより、途中に穴の空いているストローの方が軽く飲み物を吸い込めるというのが、エアブリードの効果としては実感しやすい。

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これはエアブリードのありなし、またメインノズルのどこにエアブリードを貫通させるかによる空燃比変化を表したグラフである。上が理論値、下が実験値を示している。Qab=0がエアブリードなし、その他がメインノズルの油面より上または下に種々の距離でエアブリードを空けた場合の空燃比を示している。これを見ると、エアブリード位置が油面ちょうど(0mm)の場合、エアブリードがない場合より広い範囲で一定の空燃比を取ることが分かる。これがエアブリードの効果である。

まとめると、エアブリードがあると、無い場合に比較して吸入空気量が少ない領域でリッチに振れることになる。エアを混ぜてるのにリッチに振れるのは感覚と逆だが、これは単純気化器における空燃比グラフリーンに振れている傾向が補正されるという意味で、エアブリードをすれば単純気化器と比較して全体的にリーンに寄る。

実際の二輪車用キャブレターでエアブリードがどのように設けられているかを示す。この図の10がメインノズルであり、そのメインノズルとキャブレター本体の隙間が20である。この隙間に向けて、ベンチュリ内エアクリーナ側から空気を取り込む経路が18で、この経路内にあるジェットがメインエアジェットとなる。18から取り込んだエアは、図示されていないが、メインノズルに空いている複数の小穴からメインノズル内に導入され、ここでベンチュリ内に吸い出されようとする燃料と混合される。またエアブリードには、燃料を微粒化するという目的もある。

 

実際のエアブリード穴があるメインノズルの画像を示す。3つ並んで空いている孔が、エアブリード穴である。

 

また今まで話してきたエアブリードはメイン系についてだったが、スロー系でも話は同じになる。メインエアジェットから分岐する形でエアスクリュを介して調整されたエアが、スロージェット本体にあるエアブリード穴で燃料と混合される。要はエアスクリュというのは、可変式のエアジェットのようなものである。

ここでまでで、エアブリードの効果により、一定の空燃比を保つ範囲を吸入空気量が少ない領域へ広げることができること、またエアブリードがあることで、エアブリードなしの場合より全体的にリーンへ振れることが分かった。ここで、ジェット径を拡大してエアブリードも大きくした場合と、ジェット径を小さくしてエアブリードも小さくした場合で、ある開度でどちらも同じ空燃比が得られた場合に、双方の何が違うのかという疑問が生じる。具体的には#35のスロージェットでエアスクリュ2回転と、#37.5のスロージェットでエアスクリュ3回転とで得られた空燃比が同じだった場合、どのような違いがあるのかという疑問である。

これは上がメインノズル直径2.5mm、下がメインノズル直径4.5mmの際に、エアブリード穴のサイズによって空気流量に対して空燃比がどう変わるかを表したグラフである。これにより、ノズル直径によらず、エアジェット径を拡大するほど、吸入空気量が多くなるにつれてリーン振れていく傾向が強くなることが分かる。ただし、ノズル直径が大きい下のグラフではその変化は鈍感になっている。

これをスロージェットとエアスクリュで当てはめて考えてみる。

仮に#35のスロージェットでエアスクリュ2回転と、#37.5のスロージェットでエアスクリュ3回転とで得られたアイドルでの空燃比が同じだっとする。この時スロットルを開けていくと、吸入空気量が増えていくため、アイドルで同じだった空燃比でも、エアスクリュを多く開けているほうが、少なく開けているほうよりリーン傾向に振れていくということになる。つまり、エアスクリュでの調整と、スロージェットの交換は等価ではないということになる。

ただし、実際のキャブレターセッティングでは、スロージェットの選定とエアスクリュの回転数は実際の乗車でのフィーリングで決めるものであるし、せいぜい1,2ランク違いのスロージェットに対してエアスクリュを調整することしかないから、実際にこの特性が感じられるほどの差となるかは不明である。ただし、考え方として知っておくのに損はないと思われる。

グラフ出典は全て

魚住・竹内・荒井・鈴木 : 自動車用気化器の知識と特性, 山海堂,1984, ISBN4-381-10004-2

宝諸・高橋・横田 : 単純気化器におけるエアブリードの混合比調整作用について, 日立評論, 1962/9

浅野・中馬・芳賀・持田 : 空気ブリードによる気化器特性の変化, 日本機械学會論文集, 1967, 33(255)

による

スロージェット、メインノズルの写真はキタコHPより引用

https://www.kitaco.co.jp/

本記事での引用文献は以下にまとめてあります。本来引用したグラフ、図等は全てそれぞれどの文献から引用したのかわかるようにしておくべきところ、あまりに手間がかかるという理由でこのようなやり方で引用文献を紹介する形になることを引用元および読者に対してお詫びします。

tutc-mitsukesibu.hatenablog.com

TMX38とPWK38Sの違いについて

2022以降の新型YZ125のキャブセッティングが余りに出ない件で色々調べているうちに、2021以前に採用されていたTMX38と、2022以降に採用されているPWK38Sの違いがいろいろと分かってきた。

そのため以下の内容で記事を書いていこうと思う。記事が書け次第、タイトルにリンクを張っていく予定。

単純気化器とエアブリードの効果について

ここでは最もシンプルな単純気化器によりキャブレターの空燃比制御の原理と、単純気化器で生じる空燃比制御の問題を改善するために用いられるエアブリードの効果について説明する。

プライマリータイプとエアブリードタイプの違いについて - TUTCミツケ支部

2輪車用キャブレターに用いられる二つのメインノズルの方式について説明する。

プライマリーチョーク(メインノズル)とカッタウェイの関係について

プライマリーチョークの効果とその弊害、また対となるカッタウェイについても功罪を説明する。

ここまでは文献から得られる事実を記載する。これから先の項目は自分の推測も混じるので、多分に間違いが含まれることになると思う。

プライマリーチョーク高さとメインエアジェットの関係について

TMXとPWKそれぞれのプライマリーチョーク高さ、メインジェット、メインエアジェットのサイズについて比較し、その理由について考察する。

TMXとPWKのカッタウェイの差について

なぜTMXはPWKよりカッタウェイが小さくできるのか、また排気量違いによるカッタウェイセッティング傾向についても考察する。

まとめ

文献から得られた事実と、そこから推測される現象、また実際のセッティングデータなどをもとに、TMXとPWKの違いについてまとめる。

 

またこの一連の記事を書くにあたって参考にする予定の書籍、サイト、特許文献などは以下の記事でまとめてある。

tutc-mitsukesibu.hatenablog.com

2st用キャブレター TMX PWKに関する文献まとめ

2022以降のYZ125のキャブセッティングが余りに出ないため、ケーヒンとミクニの2st用キャブレターに関する特許、その他参考になりそうな論文、書籍を調べたのでメモしておく。取りこぼしもあるかもしれないが、一応電子版が閲覧できる平成以降の特許は全て調べたつもり。

 

特開番号で以下のサイトで検索するとだれでも閲覧できる。

www.j-platpat.inpit.go.jp

特許

ケーヒン

特開2000-329007 気化器のエアベント装置
特開2000-329006 気化器のエアベント装置
特開2000-008959 気化器のエアベント装置

いずれもジャンプ時等、フロートチャンバ内の燃料が上側に張り付き、エアベントを閉塞してしフロート室内が負圧となり、燃料をベンチュリ内に供給できなくなる現象(ボギング)を改善するために、エアベントを工夫した発明。形状は異なるがPWKでも採用。

特開2000-213422 プライマリー型摺動絞り弁型気化器

鍔状のメインノズル先端部を持つことで、燃料微粒化によるレスポンス向上を図った発明。PWKには未採用。

特開2000-213421 プライマリー型摺動絞り弁型気化器

メインノズル先端形状の工夫により、燃料の噴出特性を調整する発明。PWKには未採用

特開2000-073865 摺動絞り弁型気化器におけるパワー燃料装置

パワージェットノズル位置、形状の工夫により、スロットル開閉操作による負圧の変化への応答性を改善した発明。PWKでも採用。

特開平10-220293 摺動絞り弁型気化器における摺動絞り弁
特開平10-220292 摺動絞り弁型気化器における摺動絞り弁

どちらも凹曲面を持つカッタウェイにより、ベンチュリ流速を増大することで、メインノズルおよびスローポート、バイパスポートに立つ負圧を増大させ、燃料微粒化と燃料増量側へのセッティング自由度を高めた発明。PWKで採用。

※負圧が小さすぎると、ジェットをいくら大きくしても燃料流量が増大しなくなるため、燃料増量側へのセッティング自由度が少ない。

特開平10-141140 摺動絞り弁型気化器

バイパスポート上流側に突起を設けることで、バイパス、スローポートへかかる負圧を高め、加速運転時における応答性、トルク感の向上と、リニア特性の向上を図った発明。PWKには未採用。

特開平10-082348 摺動絞り弁型気化器のバイパス孔

バイパスポートベンチュリ開口部に小凹部を設けることにより、スロットルバルブ開度変化によるバイパスポートにおける負圧の大幅な変化を抑制し、低速燃料流量を安定させる発明。PWKには未採用

特開平09-264194 可変ベンチュリー式気化器
特開平08-284759 可変ベンチュリー式気化器

いわゆるAG(Air Guide)。ベンチュリのエアクリーナ側に整流壁を設けて、カッタウェイに向けて空気を整流、流速を高めることで低中開度における負圧を高め、スロットル操作に対する燃料流量の応答性改善、また燃料微粒化を図った発明。2対の整流壁を設けるのが特開平09-264194, 1対の整流壁を設けるのが平08-284759。PWK AGでは1対の整流壁を採用。AG以外のPWKには未採用。

実開平05-083347 気化器のプライマリーチョーク装置

プライマリーチョーク先端部の中心に溝を設けることで、メインノズル周辺の渦流を緩和し、渦流による混合気の管壁付着を減少させかつ燃料を微粒化することで応答性の向上を狙った発明。PWKに採用。

ミクニ

特開2003-201920 摺動弁式気化器

パイロット経路のバイパスポートをプライマリーチョークによる空気の減速を受けない領域(キャブ中央を中心として左右対称)に設けることで、バイパスポートの負圧を高め、低速から高速への応答性を高めることを図った発明。TMXに採用。

特開2002-349353 ピストン型気化器

プライマリーチョークに小穴を設けることで、メインノズル回りの渦流を低減し、渦流による混合気の管壁付着を減少させかつ燃料を微粒化することで応答性の向上を狙った発明。TMXに採用。

特開2002-021640 二輪車向け摺動弁式気化器

メインエア導入口に網を設けることで、砂塵、ゴミの侵入を防いだ発明。TMXで採用。

特開2001-090611 摺動弁式気化器

スロットル低開度時、メインノズルのジェットニードルのストレート部がかかる領域に小穴を設けることで、プライマリータイプとエアブリードタイプの長所を兼ね備え、その結果パワージェット等補器を用いることなく理想的な流量特性を得ることを測った発明。TMXで採用。

特開平09-242613 気化器

繭型スロットルバルブにより、スロットルバルブを通過した空気がメインノズル周辺に集中し、燃料の壁面付着を抑えることで、応答性の改善を狙った発明。PWKのスロットルバルブ形状より、壁面への燃料付着が少なく応答性に優れている旨が記載されている。TMXで採用。

実開平07-008548 可変ベンチュリ型気化器のメインノズル

TMRに採用されたハイパーノズルの特許。4st用だが、そもそもカッタウェイがなぜ必要か、そしてどうしてカッタウェイをできるだけ小さくしたいのかが書かれているので必読。

書籍

魚住・竹内・荒井・鈴木 : 自動車用気化器の知識と特性, (1984), 山海堂, ISBN4-381-10004-2,

キャブレターに関する教科書。廃番なのが惜しいがたまにヤフオクやメルカリで出てくる。 

 

論文

まだサラッと概要を読んだだけだが一応メモしておく

全てGoogle ScholarでPDF閲覧可能

室蘭工業大学学術資源アーカイブで気化器、とか2サイクルとか検索するとほかにも面白そうな論文がたくさん出てくる。過去に内燃機関を研究していたえらい先生がいたようだ。

宝諸幸男. 単純気化器におけるエアブリードの混合比調整作用について. 日立評論, 1962, 44.9: 1387-1393.
浅野弥祐, et al. 空気ブリードによる気化器特性の変化. 日本機械学會論文集, 1967, 33.255: 1853-1859.
浅野弥佑; 磯部一郎. 多孔式空気ブリードによる気化器特性の変化. 日本機械学會論文集, 1971, 37.297: 1026-1032.
澤則弘; 山辺信. アマール型気化器の定常特性に関する研究 (第 1 報). 室蘭工業大学研究報告. 理工編= Memoirs of the Muroran Institute of Technology. Science and engineering, 1967, 6.1: 187-208.
林重信; 澤則弘; 飴谷孟. 小型 2 サイクル機関の燃料供給に対する研究 (第 2 報): 実用機関の燃料流量特性. 室蘭工業大学研究報告. 理工編= Memoirs of the Muroran Institute of Technology. Science and engineering, 1976, 8.3: 651-669.
林重信; 澤則弘. 小型 2 サイクル機関の燃料供給状態に関する研究 (第1報): アマール型気化器の非定常特性. 室蘭工業大学研究報告. 理工編第 8 巻第 2 号全 1 冊, 1974, 8.2: 363.
澤則弘. 小形 2 サイクル機関の吸気管系最適化に関する実験的研究. 煤, 1979, 125.k36: D52.

その他参考になるサイト

特許ではないけど、参考になるサイトをメモ

 

おそらく全世界のプライベーターで一番2stに詳しいパラグアイのオヤジ

www.dragonfly75.com

 

キャブレターの各社純正品番とスペックが載っているサイト

bindmender.com

 

今は退官されているが、名工大内燃機関工学の先生だった方のサイト。内燃機関について調べていると必ずたどり着いてしまうとその筋では有名。

glanze.sakura.ne.jp

 

 

ランクル70 BJ73 クラッチブースター交換

クラッチブースターからシューシューエアが漏れはじめた。重さは今まで比べて特段増えた気もしないけど、このままだと悪化する一方なので修理することに。

クラッチブースターのインナーキットは生産中止。ASSYも出ない。

クラッチブースターシール交換(トヨタ ランドクルーザー70・70 系)by keishoh1 - みんカラ

ググってみるとこんな記事を見つけたので、ここのシール交換で治れば、ブースターを外す必要もないし、モノは試しと買ってみた。このシールとリテーナーはまだ部品が出る。

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このようにマスターを外すだけでシールにはアクセスできる。ぐにゃぐにゃのシールをリテーナーで押さえているだけなので、マイナスで簡単に外れる。シール自体は特に切れたりしていない。交換後、エンジン始動してクラッチを踏んだ瞬間にシューというエア漏れ。治らず。

 

クラッチブースターのインナーキットはHZJのものが使えるらしいのでそれを使ってOHしてもいいんだけど、ばらすのに盛大な治具が必要らしく、ガレージもない今ではなかなか面倒くさそう。というわけでアリエクで売っている怪しいブースターを注文。値引きキャンペーンがあって14000円くらいで買えた。

https://ja.aliexpress.com/item/1005005340744905.html?spm=a2g0o.order_list.order_list_main.5.3af7585aLppKLa&gatewayAdapt=glo2jpn

 

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現物はこんな感じ。

リンクで張ったみんからの記事で、外すのは知恵の輪と書かれていたので覚悟はしていたが、本当に外れない。結局エアダクト、クラッチ周りのリレーがたくさんついているボード、ブレーキペダル、ブレーキペダルブラケット、クラッチペダル、クラッチペダルブラケットを外し、ブラケットごとずらす感じでようやく外れた。

 

交換後は笑ってしまうくらいクラッチが軽くなった。軽トラより軽く、つながるフィーリングが全くなく操作に慣れが必要。これが本来のフィーリングなのか?

ともあれシューシュー言い出す前からブースターのダイヤフラムは破れていたのか、アシスト力は減少していた模様。しばらく様子見。

 

 

ランクル70 BJ73 エアコン整備

2021年冬にランクルを手に入れた当初は、エアコンのコンプレッサーがガス抜けで動かない状態だった。とりあえずガスを入れてみたものの、コンプレッサーのマグネットクラッチが入らない。そこでプレッシャーSWを短絡するとマグネットが入って冷えることは確認できた。そしてプレッシャーSWを交換するためにエバポレータASSYを外したところ、この状態。

 

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エアコンフィルターがないので当たり前といえば当たり前。34年分?の埃が詰まっている。


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これで一応洗った後なのだけど、フィンが腐食によりボロボロになっていて、どうしようもない。漏れはないので使えるといえば使えるが気持ちが悪い。

 

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そこでラジエター屋さんに持ち込んで、コア替えをしてもらった。同じコアはなかったそうで、近いサイズのものを使って配管だけ再利用。同じサーペンタインだけど1往復分多いので、エバポレータケースを切った張ったして何とか収める必要がある。もしかすると電装屋に聞いたら新品出るのかも?ただコア替えのほうが安いだろう、多分(3万いかないくらいだった)。

 

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せっかくエバを新品にしてもまた詰まってしまうことは確実なので、対策としてダイソーの焼き網と換気扇フィルターでエアコンフィルターを製作。半年後くらいに見たら真っ黒になって埃まみれだったので、かなり効果はありそうだが、エバを外さないと(ガスを抜かないと)ブロワーケースが外れない構造の為、フィルターの交換はかなり難儀する。

エバをコア替えしたついでにエキパンとレシーバーも電装屋で新品を注文。トヨタから買うののだいたい半額くらいで買えた。この状態でふた夏を越して、今年の冬、いよいよ本腰を入れてエアコン整備をすることに。

 

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まずはリビルドコンプレッサー。馴染みの部品商から手配。4万ほど。大阪のムラオカというメーカーのものだった。

元々のコンプレッサーも音もしないしオイルも漏れていなかったのだけど、気温35℃でも高圧12bar 低圧2.5bar程度で、圧縮不良気味と思われた。規定値は高圧14.5-15.0bar 低圧1.5-2.0bar。冷えもイマイチで、街中では今年の猛暑でもなんとか過ごせるくらい(吹き出し口16℃くらい)。これをコンプレッサー交換で改善できないかと考えている。


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次にエアコンホース。こちらは純正は廃盤だったので、愛知のスギタラヂエターサービスさんで修理してもらった。配管は流用で、ホースのみ交換。7700円/本。


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次は冷えとは関係ないけど、配管を外す際にユニオンのネジが齧ってしまったので、ラジエター屋さんに持ち込んでユニオンのみ交換してもらった。


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最後にコンデンサー。運良く純正新品を格安で手に入れることができたので、気持ちよく新品。ラジエターとコンデンサーとの隙間には日東エプトシーラーを詰めた。厚さは20mmでちょうど良かった。

エキパンとレシーバーは変えたばかりなので交換なし。またコンプレッサーロックしたわけでもないので多分大丈夫なんだけど、配管類もOリング交換ついでに全てバラして洗浄した。エバも水が入らないように栓をして、外側をオキシクリーン漬けにしてみたが、思いの外汚れは出て来なかった。エアコンフィルターのおかげ。

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ガスはヤフオクでR12 400gを2缶調達。規定量は650-750g。とりあえず真空引きして400g1本のみチャージ。この状態できちんと冷えるし、冷えすぎてマグネットがカットするところまでの動作は確認。あとは暑くなったらまた漏れを確認して残りを投入する予定。